Wednesday, October 12, 2011

広河隆一『福島 原発と人々』

広河隆一『福島 原発と人々』(岩波新書、2011年)

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/eastds/index.html
 
3.11が起きるや、現地に飛んでいき、放射能線量をはかり、見るべきものを見、聞くべきことを聞き、取材を重ねてきた広河さんの報告です。
 
第 1章地震、そして事故発生 
第 2章原発作業員は何を見たか 
第 3章避難した人々 
第 4章事故の隠蔽とメディア 
第 5章広がる放射能被害 
第 6章子どもと学校 
第 7章チェルノブイリから何を学ぶか 
第 8章これからのこと
 
本文最後に「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」代表の中手聖一さんの言葉が引用されています。
 
「自治体は市民の流出を何としてでも妨害しようとしています。日本ってこんな国だったのかとあきれています。ただ、私たちは今は緊急事態だから、子ども
たちを守るために、やらなければならないことは全部やろうと 決めました。まさに走りながら考えようと言うことです。
 
子どもたちを守るっていうのはある意味利己心なんです。でも一番美しく、正当な利己心だと思っています。」
 
当たり前のことを当たり前に述べた、素晴らしい言葉です。6月24日に始まった「福島集団疎開裁判」に関しての言葉です。
 
自分は安全圏にいながら、「緊急事態だから被曝は仕方ない」などと言う異常な人間がいます。「緊急事態だから必死で子どもを守らなければならない」――これがまっとうな人間の発言です。
 
自分は安全圏にいながら、具体的な事実に基づかずに、「緊急事態だから大量の避難は現実的でない」などと、異常なことを平気で言う人間がいます。避難する努力さえせずに、避難しようとする人を押しつぶして、「現実的でない」と言い放ちます。
 
半年以上たっても「緊急事態だから仕方ない」。政府や県や御用学者のデマに便乗して、「棄民政策」を裏から支える声が市民の中からも出ています。中手さんとはまったく逆の「下劣な利己心」です。
 
福島の人たちと東京の市民が本当に向き合い、つながっていくための重要な知恵が本書にちりばめられています。