Wednesday, June 26, 2013

ヘイト・スピーチ処罰実例(14)

イスラエル政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/ISR/14-16. 17 January 2011)によると、二〇〇六年一二月七日の最高裁判決はリーディングケースとして何度も引用されている。イツハク・オリオンとイェフダ・オヴァディア事件で、アラブ系イスラエル人に対する暴力行為によって訴追され、イェルサレム地裁で有罪(三年以下の刑事施設収容、約七五〇〇NISの被害者補償)を言い渡された二人の控訴を棄却したものである。地裁は量刑事由で、犯罪が人種主義に動機づけられた事実が重要であると示した。最高裁は地裁の判断を確認し、平等と人権保護の価値を尊重する社会においては、人種主義によって動機づけられた犯罪が認められる余地はないとした。                                                        二〇〇八年一一月二三日、イェルサレム地裁は、ボアニトフ・アリク等事件で、八人の被告人がネオナチ集団構成員としてヘイト・クライムを含む犯罪の扇動を行ったケースで、有罪答弁をもとに、七年から一二ヶ月の刑事施設収容(一八ヶ月の執行猶予付)を言い渡した。以上の二件は著名事件のようであるが、そのほかの三三の事件・裁判例が一覧表で示されている(検察庁記録、二〇〇九年一一月)。一部を紹介する。                                                                               ペルマン事件。二〇〇一年一月三日起訴。被告人は違法なデモに参加し、「アラブ人に死を」と叫んだ。イェルサレム区裁判所で無罪となったが、二〇〇五年一月二七日、イェルサレム地裁に控訴。区裁判所に差戻され、二〇〇五年三月三日、六か月の刑事施設収容(六か月の執行猶予)。                                                                                                                       ペルマン等事件(上記と同一人物ほか)。二〇〇一年一一月六日起訴。被告人らは人種主義的出版物を保有していたとして、ティベリウス区裁で、有罪判決。                                                                                                      コーヘン事件。二〇〇二年六月一一日起訴。人種主義を煽動する文書を保有し、サッカーの試合中に「アラブ人に死を」と叫んだ。二〇〇四年六月一六日、イェルサレム区裁で、六〇日の拘留と二五〇〇NISの罰金。被告人がイェルサレム地裁に控訴し、地裁は、二〇〇五年五月一五日、伝聞証拠による認定であるとし、区裁の有罪を破棄差戻し。区裁は、別の直接証人の証言を得て、二〇〇六年三月一三日、有罪判決。                                                                                                           ベングヴィル事件。二〇〇三年三月三一日起訴。人種主義を煽動し、テロリスト団体を支持する情報を出版した。二〇〇七年六月二五日、イェルサレム区裁は被告人に六〇日の社会奉仕命令。双方控訴。二〇〇八年九月一七日、イェルサレム地裁は、検事控訴を棄却、被告人控訴を認容し、二〇〇時間の社会奉仕命令に減刑。被告人上訴するも、最高裁は、二〇〇八年一二月七日、上告棄却。                                                                                                                                ジフ事件。二〇〇三年七月二一日起訴。違法な集会に参加し、「アラブ人はいらない。爆弾はいらない」と書いたシャツを着用した。イェルサレム区裁は、社会奉仕命令を言い渡した。                                                                                                                                                           タチャン事件。二〇〇三年八月五日起訴。被告人は「アラブ人に死を」と叫んだ。イェルサレム区裁、二〇〇五年三月三一日、人種主義の煽動で有罪とし、二五〇時間の社会奉仕命令と一〇〇〇NISの罰金。同年一二月二五日、最高裁は被告人の上告を棄却。                                                                                                                       レダーマン事件。二〇〇四年二月四日起訴。人種主義的動機による暴行。イェルサレム区裁で有罪判決。                                                                                                                                      プリエルとエイアル事件。二〇〇四年六月七日起訴。サッカーの試合中に「アラブ人に死を」と叫んだ。イェルサレム区裁で、有罪答弁のもと、社会奉仕命令。                                                                                                                      ニシム事件。二〇〇四年六月七日起訴。サッカーの試合中に「アラブ人に死を」と叫んだ。イェルサレム区裁で、有罪答弁のもと、社会奉仕命令。                                                                                                                       エリヤフ事件。二〇〇四年六月七日起訴。サッカーの試合中に「アラブ人に死を」と叫んだ。イェルサレム区裁で、人種主義の煽動で有罪判決。