Thursday, August 15, 2013

8.15に永続敗戦という視座を学ぶ

白井聡『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)                                                                 *                                                                                                       第二次大戦で敗北したにもかかわらず、アメリカに対しては敗北を認め盲従しながら、国内においては敗戦ではなく終戦とし、アジアに対しても敗北を否認するメンタリティが続いてきた。現実を否定して敗北を否認するために、国内においても、周辺諸国との関係でも価値観が対立し、紛糾する。それゆえ、いつまでも「敗北」が繰り返され、続くことになる。天皇制を存続させたことが一つの要因であるが、天皇制存続と9条がセットとなってきた関係を、支配層だけではなく、民衆の側でも深くとらえてこなかった。このことが、現在の、天皇制維持と、9条改定の分裂となって現象している。「慰安婦」問題に代表される戦後補償問題でも、責任の否認が続く。北方領土、竹島、尖閣諸島の領土問題においても、敗戦(ポツダム宣言、サンフランシスコ条約)の意味に目を閉ざす議論が横行する。いずれも永続敗戦の帰結である。しかし、永続敗戦は明らかな破綻に瀕している。著者はこのような理解に立って、戦後日本社会の分裂と変遷を斬る。なかなか鋭い論法だ。永続敗戦という切り口の必然性は定かでない。戦後日本社会論としてはよくある議論の一種でもある。とはいえ、200頁ほどの1冊の本で、すっきりと描き出しているので、見通しがきいてわかりやすい好著だ。8月15日に読むのにふさわしい。                                                                                                          著者は1977年生まれ、一橋大学大学院をへて、文化学園大学助教。著書に『未完のレーニン――「力」の思想を読む』『「物質」の蜂起をめざして――レーニン、<力>の思想』があるが、読んでいない。