Tuesday, August 20, 2013

ジュネーヴ美術館散歩(1)

かつて宗教改革の旗手ジャン・カルヴァンが活躍したサン・ピエール寺院と国際宗教改革博物館からブール・ド・フール広場を通り抜けて、ジャック・ダルクローズ通りの上に架かった歩道橋を渡るとジュネーヴ美術館(正式にはジュネーヴ美術歴史博物館)に出る。ジュネーヴにはいくつもの美術館・博物館があるが、単に美術館と言えばジュネーヴ美術館のことと言っていいだろう。もっとも、美術館も博物館もミュージアムだから、ミュージアムと言ってもどこを指すのかわからなくなる。                                                                           1994年、はじめてジュネーヴに来た時に見学して以来、何度か訪れている。今回で何度目になるだろうか。たぶん、6度目か7度目になるのではないか。スイスでは、チューリヒ美術館、ヴィンタトゥール美術館、バーゼル美術館などと並ぶ美術館だ。                                                               2013年夏、美術館はスイスの地元作家の作品展を開催していて、入場無料になっていた。8月のジュネーヴは世界中から観光客がやってくるし、夏休みだから地元の子どもたちにも見てもらえる。黙っていても見学にやってくるはずだが、入場無料だから、見学が増えるだろう。とは言っても、平日の午後だったので、混んだりはしない。大きな展示室では他の客と出会うが、小さな展示室では一人で鑑賞できる。美術品を見てるのか、他人の頭や背中を見ているのかわからない日本の美術展とは大違いだ。                                                                                              そういえば、日本では爆発的なフェルメール人気で、何度か見に行ったが、とにかく人間が多すぎて嫌になる。仕方のないことだが、大声で喋り散らす「解説屋」が多いのも耳障りだ。「真珠の首飾りの少女(青いターバンの少女)」の時は、見に行くのを止めた。ハーグのマウリッツハウスで何度も見た。平日の午前なら、三〇分ほど展示室に一人きりで、ゆっくり見ることができることもある。だから、他人の後頭部を見に行く必要はない。                                                                                                                  ジュネーヴ美術館に話を戻すと、スイスを中心に西欧中世・近代の美術品が多いが、歴史博物館でもあるので、民族学、宗教史、風俗史に関連する所蔵品も多い。コイン、衣装、食器・陶器、家具、インテリア、武器、ステンドグラスなども多数展示されている。                                                                                                                紀元前4世紀ころの近東の花瓶、古代エジプトの立像、スフィンクス像、紀元前5世紀のアテネのコインやメダル、紀元2世紀ころのローマ時代シリアのディオニュソス画(モザイク)、4世紀ジュネーヴの銀製器ヴァレンティニアン、11世紀コンスタンチノープルの聖十字架など興味深い遺物が所蔵されている。