Sunday, August 04, 2013

6.16新大久保駅前弾圧救援会主催報告集会7.31

 七月三一日、「六・一六新大久保駅前弾圧救援会」主催の報告集会が開催された。六月一六日に新大久保駅前で行われた「在日特権を許さない市民の会(在特会)」らの差別排外デモに抗議した市民が、混乱の中逮捕された。大半は逮捕だけで釈放されたが、一名、Aさんだけが勾留され、七月五日に釈放と不起訴を勝ち取った。その報告集会である。                                                                         主催者声明によると、「今回の弾圧はあまりに多くの問題があります。まず新大久保の『在特会』らのデモのひどさは周知の通りであり、抗議した側を逮捕するなど言語道断です。もちろんAさんは逮捕されるような事など全くしていません。差別排外デモに甘く差別に抗議する側に厳しい警察権力、ひいては日本国家の政策が現場に表れたのです。抗議する側にいて逮捕された四名のうち、三名は三日間で釈放されました。さらに、在特会の逮捕者四名すら一二日目までに全員が釈放されたのです。しかしAさんだけは、勾留理由などないのに二〇日間も勾留されました。明らかに狙い撃ちにされた嫌がらせで、ありえない事です。捜査を主導した公安検事・鈴木敏宏と検察庁は絶対に許されません」という。                                                                                               勾留が長期化したのは、取調べを拒否したため、これに対する報復であると推測される。「監獄や裁判所も責任が強く問われます。担当の新宿署は原宿署と結託し、取り調べを拒否するAさんを部屋から引きずり出そうとしました。巨大留置場を持つ原宿署は『足首が痛い』と通院を求めるAさんを二週間近く放置しました。ともに『代用監獄』の非人道的な本質を露呈させたのです。私たちの原宿署前での激励行動も激しく弾圧してきました」。「しかし私たちは出来る限りの最大限の反撃を行い、解放を勝ち取った事が成果です。Aさんは取り調べに出ること自体を最後まで拒否し続け、検事に一切調書を作らせず、裁判持ち込みを断念させました。同時に取調べを強要する代用監獄の不当性も明らかにしたのです」。                                                                                           報告集会では、被逮捕当事者であるAさんから報告があり、続いて接見及び不起訴獲得に活躍した弁護団から三名の弁護士があいさつした。続いて、鵜飼哲(一橋大学教授)     「反レイシズムと弾圧」、前田朗(東京造形大学教授)「黙秘と取調拒否の権利」の二つの問題提起がなされた。前田発言は、前田朗「取調拒否権の思想(一~八)」『救援』五一九~五二六号(二〇一二~一三年)を参照。                                                                                                      鵜飼哲は、冒頭に日韓の青年の「国境を超えた歴史和解」のために二〇一二年夏にソウルで開催された討論会で、日本側の学生が和解や相互理解をほとんど拒否するナショナリズム発言を事前準備して行ったことを紹介した。続いて、新大久保絵の在日特権会に対するカウンンター行動の意義を「この列島における反レイシズム運動を大衆的な文化闘争として表現したこと」と位置付けた。さらに、「レイシズムと警察」と題して、「すべての(旧)植民地宗主国で『警察はレイシスト』は圧倒的な歴史的、日常的現実」と指摘した。植民地時代のアルジェリアにおけるフランス官憲がレイシストであったことはもちろんだが、近縁のフランス郊外蜂起においても警察はレイシスト的役割をはたして、移住者を弾圧した。日本でも同じことが言える。「レイシストに甘い警察はレイシスト」「反レイシズム運動を弾圧する警察はレイシスト」という認識を確立することの重要性が指摘された。それゆえ、現在のヘイト・クライム、ヘイト・スピーチの法規制をめぐる議論に、「日本の警察の民族差別的体質に関する具体的な調査にもとづく認識を繰り込む必要」があるという。                                                                                                                       極めて重要な指摘である。この間の議論の中で、「ヘイト・スピーチを法規制すると、日本人と朝鮮人が対立した事件で、警察は被害者である朝鮮人を加害者に仕立てる恐れがある。こうした危険性を排除できないから、立法は逆効果だ」という主張がなされることがある。日本警察の実態を見れば、なるほどという面もある。しかし、鵜飼の指摘を踏まえて、警察がレイシストとしてふるまうことを厳しく批判していく運動が求められている。警察に反レイシズム運動の重要性を認識させ、レイシストに甘いと批判されないように意識させる必要である。とても重要な指摘である。