Monday, August 26, 2013

平和主義の政治哲学を学ぶ

松元雅和『平和主義とは何か――政治哲学で考える戦争と平和』(中公新書)                                                                                                            *                                                                                                                                                「愛する人が襲われても無抵抗?」/「正しい戦争はある?」/「虐殺を武力で止めないのは無責任?」/新世代がスリリングに論じる、いま目指すべき「平和主義」                                                                                                                                                     *                                                                                                                                                                                           以上が宣伝文句だ。たしかに非平和主義から平和主義に対する批判の数々を受け止めながら展開される議論はスリリングという言葉にふさわしい。著者は、1978年生まれ、慶応大学、ヨーク大学大学院などを経て、島根大学准教授。主著に『リベラルな多文化主義』がある。本書は、誰もが平和を愛するにもかかわらず、平和主義となると必ずしも多数ではなく、現実主義や人道的介入が唱えられる現代における平和主義の在り方を、政治哲学というレベルで検討する。平和主義を「義務論」と「帰結主義」の2つに分類し、戦争の殺人は許されるか、戦争はコストに見合うかを議論する。続いて、非平和主義として「正戦論」「現実主義」「人道介入主義」の3つの立場からの平和主義に対する批判を一つ一つ取り上げて、吟味したうえで、平和主義に十分に身があることを解明する。論点の整理がよくできていて、ていねいに論じている。特に反対意見との対話を心がけた記述であることから、議論の筋道が鮮明になる。政治哲学という土俵の中では、本書はとても分かりやすく説得力のある本だろう。勉強になった。                                                                                                                                                        しかし、平和運動という観点で読むと、ほとんど参考にならない。現代平和学のアプローチにも必ずしも適合的ではない。「戦争と平和」という問題設定に固執しているのは、「構造的暴力」論を批判する意味なのか、それとも、ここでの問題設定としてはこうなるという意味なのかも不明である。状態としての平和観念から出ようとしないことも。