Wednesday, October 09, 2013

日本の沖縄植民地支配を問い続ける

知念ウシ『シランフーナーの暴力』(未来社)                                                     『ウシがゆく――植民地主義を探検し、私をさがす旅』(沖縄タイムス社)、共著『闘争する境界――復帰後世代の沖縄からの報告』(未来社)で、沖縄の歴史と現状を根底的に考える視点と思索を提示した著者の「政治発言集」は、シランフーナー(知らんふり)の日本人の意識と行動を鋭く鮮やかに分析する。「日本人よ、沖縄の基地を引き取りなさい!」というストレートな問題提起にたじろぐ日本人は、シランフーナーに逃げ込むか、話題をすり替えるしかできない。日本の平和運動が沖縄の平和運動に連帯しているという姿勢では、「沖縄に米軍基地を押し付けているのは日本であり、日本人であり、そこには日本の平和運動も含まれる」という当たり前のことを見忘れる。忘れた方が楽だからだ。著者は「知らないふりは暴力であり、攻撃である」と踏み込む。日米同盟論に立ち、中国敵視政策を進めている日本政府や政策決定エリートだけの問題ではない。沖縄に癒されたがる観光客も、沖縄の平和運動を指導したがるヤマトの平和運動家も、沖縄米軍基地を撤去するための闘いの場であるはずの東京で何をしてきたか。何を成し得たか。何もなしえない日本人は、シランフーナに逃げ込むことで、実は「無意識の植民地主義」(野村浩也)に安住している。先住民族、朝鮮半島、台湾、アジア太平洋諸地域に対する植民地支配と侵略の歴史を直視せず、責任回避を続けてきた日本への重要な問いかけである。沖縄の米軍基地撤去は「日米の帝国主義の要をはずす」闘いである。日本帝国主義、植民地主義、そして人種差別との闘いが続く。日本で広く読まれるべき著作である。