Monday, December 23, 2013

獄壁をこえた奇跡の愛

『無実で39年 獄壁をこえた愛と革命 星野文昭・暁子の闘い』(星野さんをとり戻そう!全国再審連絡会議)――1972年の「沖縄返還」を前に、1971年11月、学生運動が取り組んだ沖縄返還協定批准阻止闘争(米軍基地を温存した核つき返還、ベトナム戦争協力への反対闘争)の渋谷デモにおける混乱のさなか、一人の警察官が亡くなった。その「犯人」とされたのが高崎経済大学生の星野文昭さん(1946年、札幌生れ)。75年に不当逮捕され、79年一審で懲役20年、83年二審で無期懲役となり、87年最高裁で確定、現在、第二次再審請求中。冤罪ストーリーは、他の冤罪事件と非常によく似ている。共犯者の巻き込み証言、少年に対する強引な自白強要の取調べ、物的証拠なしに供述で有罪認定、被告人に有利な証拠の無視と歪んだ解釈、検察官手持ち証拠の隠匿等々。2009年11月に提出した第二次再審請求は12年3月に東京高裁が規約決定をだし、異議申し立てにより異議審が進行する中、弁護団と支援者は全証拠開示請求運動を展開している。被告人の無実の証拠を持っていてもかくしておきながら有罪判決をかすめ取るのは日本検察の常とう手段である。松川事件の諏訪メモがとくに有名だが、どの冤罪事件でも後になって証拠隠しや証拠隠滅が明らかになる。大阪地検特捜部によるフロッピディスク改ざん事件は、よくある事態の一つに過ぎない。そもそも捜査機関が収集した証拠を検察官がかくして、弁護人にも裁判所にもみせず、都合のよい証拠だけを使って裁判を進める日本の異常さが問題である。星野裁判のその典型だ。本書は、1986年9月17日に、星野さんと獄中結婚し、手を握ることすらできないまま、面会に通い続け、星野さんの獄中闘争を支え続けてきた暁子さん、この2人の愛と革命の結晶だ。前半は、星野文昭さんの優しく美しい絵画作品(主に、生まれ育った北海道の風景画、静物画、妻の暁子さんの肖像画など)と、暁子さんの詩作品とをセットにしている。暁子さんの手記「生命の輝き――星野文昭とともに生きて」がこれに続く。2人の愛は文字通り奇跡の愛である。1984年、秋田大学の聴講生だった暁子は、「傷だらけの孤立した文昭の姿をじっと見続けた」。まもなく文通を始め、東京拘置所に面会に通うようになった。両親の反対を押し切って獄中者との結婚に踏み切った暁子を待っていたのは、決して手を触れることのできない夫との30年にも及ぼうという愛と共闘の日々であった。獄中で体調を崩し、病気に苦しむ文昭、獄外でやはり心身の負担から体調を崩す暁子。その苦しみを乗り越えて、想像を絶する闘いを続ける2人である。文昭と暁子の愛はそれ自体が闘いである。生きることが闘いであり、生きぬくことが革命である。本書後半は、文昭さんの陳述書「私は無実だ。私はやっていない」、再審弁護団(私が尊敬する岩井信、鈴木達夫、西村正治など)の訴え、歴史的背景と、事件の全貌の解明である。さらに、元・在日韓国政治犯で再審無罪を勝ち取った金元重、刑事法学者の宮本弘典などの講演などが収録されている。1800円。発行:星野さんをとり戻そう!全国再審連絡会議 http://fhoshino.u.cnet-ta.ne.jp/