Wednesday, July 02, 2014

レイシズムの社会学に学ぶ(3)研究方法論の模索

樋口直人『日本型排外主義』(名古屋大学出版会、2014年)                               
「第一章 誰がなぜ極右を支持するのか――支持者像と支持の論理」では、日本における排外主義運動を論じるために、西欧における極右研究の方法論を参照する。西欧の研究も徐々に深化し、進化し、本格化してきた。                                     

「誰がなぜ」支持するのかに絞っても、4つの重要な理論があるという。第1は「近代化の敗者」論で、「社会変動の結果として発生する新たな弱者の不満が、極右の成長をもたらした」と考える。社会解体や相対的剥奪に着目した理論である。第2は競合論で、「移民という要素に特化した説明図式」を提示し、エスニック競合論となる。第3は抗議政党論で、「政治状況に対して幻滅した者が、極右を既成政党とは異なる存在とみなす」と見る。第4は合理的選択論で、「有権者が極右に対して投票するのは、政府から利益を得られるものと期待しているから」と見る。樋口は合理的選択論が、特定の属性に注目するのではなく、イデオロギーや政策、争点に対する選好に注目して理論を展開していることに説明力を見る。ジェンダー、年齢、学歴・職業などの属性では極右現象を説明できず、「近代化の敗者」論、競合論、抗議政党論には難点があるとし、合理的選択論についても、トートロジー的性格を有していると指摘する。樋口は、経験的研究に照らして4つの理論が否定されるわけではないとしつつ、「どれも現実の一側面を反映しているといえるが、どの仮説がどれだけの説明力を持つかが問題となる」とする。こうして樋口は研究方法論を模索する。