Thursday, July 31, 2014

小谷順子「憎悪表現(ヘイト・スピーチ)規制消極論とその背景」

小谷順子「憎悪表現(ヘイト・スピーチ)規制消極論とその背景」『法と民主主義』490号(2014年)が出た。                                     
http://www.jdla.jp/houmin/index.html                            
著者は従来からヘイト・スピーチについて研究してきた憲法学者、静岡大学教授で、げんざいアメリカのジョージタウン大学に留学中。この論文ではアメリカとカナダの議論を紹介・検討している。次のような論文がある。                           
小谷順子「アメリカにおけるヘイトスピーチ規制」駒村圭吾・鈴木秀美編『表現の自由I―状況へ』(尚学社、二〇一一年)                                     
同「Hate Speech規制をめぐる憲法論の展開―一九七〇年代までのアメリカにおける議論―」『静岡大学法政研究』第一四巻一号(二〇〇九年)                           
インターネット上では、小谷順子「憎悪表現(ヘイト・スピーチ)の規制の合憲性をめぐる議論」『SYNODOS JOURNAL』(2013年5月23日)。                  
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『法と民主主義』485号(1月号)では、「特集・ヘイト・スピーチ法をめぐる状況」を組み、金尚均、楠本孝、前田朗、李春煕の論文を収めた。次いで、486号(2・3月号)では、「特別企画・再び、「ヘイト・スピーチ」について考える」で、神原元、榎透の論文を収めた。                                         
私が建てた当初の企画では、ヘイト・スピーチ規制論をまず掲載し、次に規制反対論からの反論を掲載し、その次に規制論からの再反論といった具合に、「論争」を組織したかったのだが、実現しなかった。というのも、榎論文は規制反対派だが、最初の金、楠本、前田、李論文に対する反論ではなく、従来の議論を単に繰り返すだけのものだったからである。(なお、神原論文はカウンター行動の報告。)                       
このため、他の規制反対派にも論文をお願いしたいと考えたのだが、編集部からは「これで打ち切り」との通告があった。それはあんまりだと思い再交渉して、もう一つだけ論文を掲載してもらえることになり、アメリカ留学中の小谷順子・静岡大学教授に無理を言って執筆してもらった。                              

安倍政権の暴走で、集団的自衛権や特定秘密保護法をはじめ、『法と民主主義』は特集だらけで、頁数が足りないくらいだから、ともあれ7本の論文を掲載できたことは良かった。個人的には、「もっと理論論争を」と思うが、他の場所を探す必要がある。