Monday, December 22, 2014

フクシマを風化させない

日野行介『福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞』(岩波新書)
議員立法で成立した子ども・被災者生活支援法が見事に骨抜きにされていった経過を詳細に追跡した新書である。被災者や支援者を小ばかにした暴言ツイッターで話題となった復興庁の水野靖久参事官を特定し、責任追及をした場面から始まる。表面的なことは良く知っていた件について、議員や官僚が実際にどう動いて、法律を埋葬していったかがよくわかる。現場の実態を無視し、被災者の苦難を無視し、三権分立も軽視して、官僚が自在に好き放題の変質政策を展開する。憲法違反の議会無視がまかり通る。背後にいるのは「原子力マフィア」であることが、随所に小刻みに登場し、読者にもよくわかる。あまりにも無責任で、被災者を馬鹿にした話が続くので読むのが苦痛になったりもするが、前著『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(岩波新書)とともに勉強になる。
官僚の国民無視は、厚生労働省で言えば、公害や薬害を続発させた時代の国民殺傷行政に明らかである。つまり、一つには、福島原発事故に限らず、官僚は国民の生命や安全や健康に関心を持たず、企業の利潤追求にひたすら貢献していた。地震や台風の際に現地で人々が大変な苦労を続けているのに対して、官僚は電話やFAXやPCで情報管理を続けるだけである。それだけならまだしも、福島原発事故の場合には原子力マフィアを守ると言う大命題が優先させられる。東電の刑事責任をもみ消そうとする検察に始まり、被災者支援も損害賠償も、再稼働問題も使用済み核燃料問題も、あらゆる局面で事故隠し、情報隠し、改竄、情報操作、差別と分断を活用する。被災者を分断させながら、上から下に向かって「分断させるな」などと暴言を吐く。連帯を破壊しながら「絆」などと宣伝する。被曝被害を隠蔽し、調査も報道もさせない。こうした流れがいつの間にかつくられ、「風化」が意図的に組織される。
12月21日、新横浜のスペースオルタで、福島原発かながわ訴訟原告団の協力を得て、平和力フォーラム「混迷する時代のただ中で」を開催し、原発民衆法廷判事の一人だった岡野八代さん(同志社大学教授、政治学、フェミニズム研究)にインタヴューを行った。原発民衆法廷とは何だったのかを振り返り、特に「民主主義」とは何かを基礎から問い直しながら、原発問題が思想のレベルで問いかけたこと、いま私たちに突き付けられていることを語っていただいた。