Tuesday, April 14, 2015

どちらが捏造なのか――「慰安婦」問題をめぐる報道・研究の検証

今田真人『緊急出版 吉田証言は生きている  慰安婦狩りを命がけで告発! 初公開の赤旗インタビュー』(共栄書房)
昨年、朝日新聞や赤旗が「吉田証言は虚偽だから記事を取り消した」のに対して、著者は1993年10月の吉田清治氏へのインタヴュー全文を公開し、解説を加える。吉田証言の一部を切り取って、その証言価値を否定する詐欺的手法を批判し、吉田証言全体を読めば、証言は虚偽とは言えず、むしろ多くのことを教えてくれることが分かるという。著者は当時、赤旗記者として吉田氏に取材した。その取材資料の中にあったワープロ用のフロッピーを保存していて、本書第1章に全文を収録している。
[目次]
第1章 吉田清治氏のインタビューの記録
第2章 〈資料解説〉吉田証言は本当に虚偽なのか
  ──初公開の赤旗インタビューで浮かび上がった新事実
第3章 朝日と赤旗の「検証記事」の検証
第4章 秦郁彦『慰安婦と戦場の性』の検証
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93年10月4日のインタヴューでは、「慰安婦狩り」の実態について、国家犯罪と言う点について、労務報告会とは何か、済州島の現地訪問について質問している。93年10月18日のインタヴューでは、産経新聞の攻撃への反論について、イヤガラセの卑劣な具体的内容、戦後直後の証拠焼却、かかわった慰安婦の数、著書に書いた年月日について、フィクションの所はどこか、吉田氏の本名などについて、質問している。
第2章では、インタヴュー時の時代状況を説明したうえで、吉田証言で言及されている事実を分析し、「裏付け得られず虚偽と判断」という認識論は大きな誤りと述べる。また、民間業者が戦争末期の朝鮮で慰安婦狩りをすることはできず、国家的行為でないとできなかったと言う吉田証言の合理性を指摘する。その他数々の論点を取り上げて、虚偽や捏造と言う非難に根拠がないことを明らかにしている。
第3章では、吉田証言を取り消した朝日新聞と赤旗の「検証記事」を検証している。
第4章では、吉田証言を虚偽とし、吉田氏を「詐話師」と非難した秦郁彦『慰安婦と戦場の性』を検証している。秦の手法は「自分を棚に上げ、相手の人格を貶める手法」、「ウソをつきながら、相手を『ウソつき』と断定する手法」、「裏どり証言がないだけで、証言を「ウソ」と断定する手法」、「電話取材での言質を証拠に、『ウソつき』と断定する手法」、「白を黒と言いくるめるための、引用改ざんの手法」と特徴づけている。さらに、「何人もの研究者が秦氏の著作のデタラメさを指摘」とし、3人の研究者(前田朗、南雲和夫、林博史)が秦郁彦の論著を批判していることを紹介し、秦を徹底批判している。
私の名前が出てくるのは、秦郁彦が、私が作成した図を無断引用したことを、私が批判した文章である。1999年から2000年にかけて、私は3つの文章を公表した。そのうち『マスコミ市民』と『季刊戦争責任研究』の論文が紹介されている。私はもう一つ、『Let’s』にも秦批判を書いている。秦郁彦の歴史学とは盗用、捏造、憶測の歴史学だ、と言うのが私の結論であった。これに対して秦は、弁解にならない弁解を並べた挙句、もう歳だから、などと述べていた。アホらしいのと、それ以上やると「個人攻撃」となりかねないこともあって、私はそれ以上の追撃はしなかった。そのままになっていた文章を、著者が思い出させてくれた。
吉田証言をどう見るかは、なかなか難しい問題であるが、吉田証言を批判した秦郁彦こそ憶測や捏造の歴史学者の疑いがあり、きちんと検証する必要があるのは間違いない。
秦だけではない。『週刊金曜日』1035号には、吉方べき「『朝日』捏造説は捏造だった」という重要論文を掲載している。わずか2頁だが、事実調査に基づく重要論文である。著者は「朝日新聞や日本の弁護士が騒ぎ始める前は、韓国では『従軍慰安婦』問題など出ていなかった」という渡辺昇一(渡部昇一の誤り)等が広めた話こそが捏造であることを明らかにしている。著者は1950年代から90年代の韓国メディアを調査し、50年代以後様々な時期に様々な形で韓国メディアが報道していたことを論証している。

秦郁彦、渡部昇一をはじめとする歴史修正主義者が、憶測や捏造を繰り返してきたのではないか。きちんと検証する必要がある。