Sunday, June 14, 2015

夜の日輪を見た――江戸戯作vs井上戯作

紀伊國屋サザンシアターでこまつ座公演、東憲司版『戯作者銘々伝』は、井上ひさしの短編小説集『戯作者銘々伝』を、東憲司が戯曲化した。文庫では、井上ひさし『京伝店の草入れ』(講談社文芸文庫)でも読める。
東憲司

戯作者・山東京伝、恋川春町、唐来参和、式亭三馬、太田南畝などが続々と登場する。江戸戯作に井上ひさしが挑んだ初期作品群は井上戯作の誕生地である。山東京伝に北村有起哉、蜀山人と式亭三馬に相島一之、蔦屋重三郎に西岡徳馬、そして女性群を新妻聖子が一人五役。はじまりは、おやっ、いま一つかなと言う印象を持ったが、徐々に舞台に惹きこまれる。途中休憩時にはすっかり取り込まれていた。そして、二部は文庫表題作『京伝店の烟草入れ』だ。小説に感動した読者なら、舞台で、あの「夜の日輪」=江戸の夜空を揺るがす三尺玉を見ることができると考えただけでもゾクゾクとする。クライマックスは予定通り、予想通りにやってきた。若き幸吉と、戯作者を引退していた山東京伝の出会いと共感が、太陽に挑戦する花火という果敢な闘いとなる。その瞬間、舞台は爆発する。江戸戯作と井上戯作の激突である。