Thursday, July 30, 2015

ブラック企業批判ふたたび

今野晴貴『ブラック企業2――「虐待型管理」の真相』(文春新書)
「ブラック企業」批判の先頭を走る著者、POSSE、ブラック企業被害弁護団の協働の成果がまとめられている。前著ゆえに、ブラック企業から攻撃されてきた著者だが、事実に基づいて徹底批判を続けている。
「ブラック企業」とたたかう 今野晴貴『ブラック企業――日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)
ブラック企業にたかる「ビジネス」批判 今野晴貴『ブラック企業ビジネス』(朝日新書)

本書の最初の問いは、ブラック企業が世に知られて、世論の批判も上がっているのに、なぜ若者たちが「ブラック企業に入ってしまうのか」。被害が拡大し続けているのか。「なぜ辞めないのか」である。就職情報は企業の宣伝なので、良い面しか見えない。ブラック企業であるとは見抜けない。それでも、入った後に気づけば辞めればいいのに、辞めないのはなぜか。そこに「虐待型管理」の恐ろしさがある。被害者の多くはブラック企業に積極的に入社し、また、自ら「辞めない」で働き続けている。この謎を解き明かすことで、著者は、ブラック企業だけではなく、若者が置かれた状況、日本社会論、日本的労働論を鮮やかに解明していく。読み応えのある新書だ。