Monday, August 14, 2017

日本の行方、憂国の行方

鈴木邦男・白井聡『憂国論――戦後日本の欺瞞を撃つ』(祥伝社新書)
<■日本の政治に、未来はあるのか
トランプ政権誕生以後、日本の対米追従はますます加速している。政府は、国富を犠牲にしてまでも、自己保身を図っているのだ。「堂々たる売国」である。
いっぽう、戦後の日本には、真に国を憂えた人たちがいた。三島由紀夫、野村秋介、そして数多の右翼・左翼の活動家たちだ。彼らはいかに日本を変えようとしたのか。
売国がまかり通る今、彼らが活動をしていたころよりも、はるかに時代の空気が悪くなっている。国民全体がレベルダウンしているのではないか。
信念の政治活動家と気鋭の政治学者が、それぞれの視点から国を思い、戦後の政治活動、天皇の生前退位、憲法改正、日本の政治の現在と未来について語り下ろした。>
《本書の内容》
第一章 三島由紀夫と野村秋介
第二章 戦後の「新右翼」とは何だったのか
第三章 天皇の生前退位と憲法改正
第四章 日本の行く先
既に書評でも右翼左翼の激突、世代の異なる論客の対談として出ているようだが、鈴木は元右翼で、いまは右翼左翼の対立とは別次元の評論家と言った方が良い。
白井は1977年生まれで、70年の三島事件や72年の連合赤軍事件を知らない。鈴木としてもこういう世代との対談は初めてだと言う。鈴木は体験をもとに、白井は歴史を語る。前半は、白井が鈴木の体験や思想を問う質問が中心であり、その中で白井のコメントが随所に出てくるので、なかなかおもしろい。後半は、天皇と安倍首相の対立をどうみるか、自称保守は保守なのか、彼らはこの国をどうしようとしているのか、それ以前に彼らは人間をどう見ているのかを問う。
白井「日本の政治に未来があるだろうか」
鈴木「ないでしょう(爆笑)」。
爆笑付きだが、二人の答えはこれに尽きる。安倍政権は「堂々たる売国」だからだという。なるほど。
白井「どうやってナショナリズムを使いながらナショナリズムを超克していくか」、
鈴木「ナショナリズムを戦いながら、ナショナリズムを超えていくのが、日本の右翼の本懐でしょう」と。
その方法は具体的には語られていないが、白井が鈴木の話をいろいろと引き出している点で面白く読める対談だ。
以前から思っていたことだが、鈴木の野村秋介の評価は過大だと思う。野村を持ち上げたい心情は理解できる。しかし、『さらば群青』などを読んだが、思想的にはぱっとしない。
「野村さんは三島由紀夫になりたがっていた」という鈴木の言葉も何度か読んだ。ならば、「2番煎じになることが夢だった男」にすぎないだろう。
また、三島事件も朝日新聞事件もテロではなかったとして、テロだとただの人殺しになってしまうことが分かっていたからだと言う。しかし、癌の野村が自決することが目的だったからにすぎない。河野邸焼き討ち事件や経団連事件の説明がつくだろうか。
もう一つ気づいたところ(181頁)。
白井「一水会は組織として改憲をめざすものではないのですか。綱領みたいなものがあるのですか。」
鈴木「とくに、ないですね。」
白井「一度も作成したことがない。」
鈴木「ええ。」
しかし、一水会のウェブサイトには「綱領」「基本理念」「活動基本原則」が掲げられている。
いつ作成されたものかは明記されていないが、現在の木村三浩代表になってからのもののようだ。
なにしろ、「活動基本原則」には「平和力フォーラム」の名前が出てくる。私のことだ。