Thursday, August 10, 2017

平和の憲法政策論に学ぶ(4)

水島朝穂『平和の憲法政策論』(日本評論社)
IV  日米安保体制のグローバル展開
「第15章 安全保障体制」では、安全保障体制の用語解説を行って、導入としている。短い概説だが、安全保障の担い手として国家の安全保障から人間の安全保障への転換の必要性を説いている。
「第16章 日米安保体制のtransformationと軍事法の変質」では、世界的規模での米軍再編に自衛隊が組みこまれていく過程を分析し、防衛省発足をはじめとする軍事法制の変質を検証する。
「第17章 米軍transformationと自衛隊の形質転換」では、前章に引き続き、防衛同盟から介入同盟への転換、海外権益保護型への転換、それゆえ海外派遣型自衛隊の創出を確認しつつ、自衛隊解編への道筋を探る。
「第18章 「日米同盟」と地域的集団安全保障」では、国連と日米同盟の関係を問い、地域的集団安全保障と憲法の立場を読み解き、OSCEモデルを瞥見し、北東アジアの協調的安全保障を模索する。
グローバリゼーションが資本、情報、軍事のグローバル化を急速に進展させた時期、米軍再編と自衛隊再編がやはり急速に進行した。21世紀の日米同盟なるものが喧伝され、「同盟」思考が政権のみならず、メディアや一般市民にも浸透してきた。憲法違反の軍事化がどんどん進行する。水島はそうした事態をつねに冷静に追いかけ、そこに胚胎する矛盾を的確に診断する。自衛隊の装備の現代化や、活動範囲の拡大が、自衛隊自身にさまざまな矛盾を引き起こしている。憲法との矛盾や、市民意識との矛盾、そして自衛隊内部の矛盾。これらが自衛隊解編の手掛かりになる。