Wednesday, December 27, 2017

巨大ブラック企業――日本資本主義の闇

佐高信『巨大ブラック企業』(河出書房新社)
企業批判の第一人者は、ワタミをはじめとするブラック企業への批判はきちんとやる必要があるが、それ以上に巨大ブラック企業の闇を暴くことこそ必要だとして、東京電力、東芝、日本航空、トヨタ、松下電器(パナソニック)をとりあげる。日本資本主義の中軸を成す大企業の多くが文字通りのブラック企業なのに、一部の中小企業にばかり焦点を当ててばかりいると、重要なことが見えなくなる。両方への批判が必要だが、何より巨大ブラック企業のあくどさこそ、影響力の大きさ、被害の深刻さにおいて際立っている。日本資本主義そのものの腐朽性を暴くことが、この国と社会の在り方を変えるための出発点となるべきだ。
辛口批評で知られる著者だが、本書では、各社に詳しいジャーナリストを招いて対談を行っている。東京電力について斎藤貴男、東芝について辻野晃一郎、日本航空について森功、トヨタについて井上久男、松下電器(パナソニック)について立石康則。このため多面的多角的検討がなされ、いっそう明晰な批判になっている。数々のエピソードをもとに、表層をすくいとりつつ本質を撃つ、というべき手法が冴える。