Monday, February 19, 2018

イスラームの側から世界史を書き直す


中田考『帝国の復興と啓蒙の未来』(太田出版)
イスラームの側から世界史を書き直す試みである。サイードのオリエンタリズム以来、戦後民主主義の実態がアメリカの圧倒的影響であり、さらに西欧中心主義であることが常識となり、西欧中心主義を克服する努力がなされてきたが、本書を読み通すと、それが全く不十分であったことに気づかされる。
単にイスラームに関する知識を追加すればよいと言うものではない。政治、経済、社会、文化に抜きがたく沁みついた心性と如何に対質するかが問われている。なまなかなことでは西欧中心主義を克服など出来はしない。そこには植民地主義も含まれる。長期にわたる思想的課題である。
第一章 西洋とイスラーム
ムスリム難民の可視化
ウエルベックと『服従』
『服従』から見るヨーロッパとイスラーム
『服従』が描くイスラーム政権の未来
ヨーロッパとは何か
ヘレニズムとヘブライズム
イスラーム・コンプレックス
十字軍パラダイムを超えて
キリスト教の神の国とイスラームのウンマ
10 キリスト教世界とダール・イスラーム
第二章 イスラーム文明論
イスラーム文明
イスラームと歴史
規範的イスラーム
宗教とシャリーア
イスラーム前史
イスラーム文明の誕生
イスラーム文明の祖型マディーナ
正統カリフ時代
ウマイヤ朝とアッバース朝におけるイスラーム文明の成立
10 イスラーム文明による世界の一体化
11 パクス・モンゴリカの時代からモンゴルのトルコ・イスラーム化へ
第三章 イスラームと啓蒙の文明史
啓蒙のプロジェクト
リヴァイアサン崇拝
イスラーム世界の植民地化
植民地支配に対する反応の類型論
イスラーム復興主義ワッハーブ派
18世紀におけるネオ・スーフィズムの宗教改革
サファヴィー朝とオスマン帝国の崩壊
イスラームと、インド、ロシア、中国
オスマン帝国崩壊後のカリフ不在の下でのイスラーム運動の展開
10 スンナ派とシーア派の対立の21世紀
終章 文明の再編